あなたがセクシストじゃないなら

あなたがもし、「この社会には性差別があり、それは是正されるべきだ」「どのようなジェンダーにも機会の平等があるべきだ」と考えていれば、あなたはセクシストではない。アンチ-セクシストだ。
女性差別だけでなく男性差別もある、男性差別の方が深刻だ、男性差別反対」と考えている人も、セクシストではない。セクシズムに反対なのだから。

「自分はセクシストではない、セクシストにはなりたくない」という自覚を持つことには、沢山のメリットがある。
そのメリットを紹介したい。

・あなたがセクシストじゃないなら、フェミニズムの特定の一派に同意できないからといって、セクシストに味方する必要が無くなる。
・あなたがセクシストじゃないなら、SNS上のフェミニスト一人一人の発言の矛盾点を突くことに勤しむ必要がなくなり、あなたにとっての「もっと重要な問題」にフォーカスすることができる。フェミっぽいことを言ってる人にいちいち突っ込みを入れなくても、もっと他にできる「有意義なこと」があると気づける。
・あなたがセクシストじゃないなら、フェミニズムやセクシズムについてそこいらの匿名アカウントに無闇に何か尋ねていくのではなく、自ら問題意識を持って学ぶことができる。そして自分の偏見や誤解で誰かを傷つける可能性を減らせる。
・あなたがセクシストじゃないなら、学位や著書を持ち権威のあるフェミニストアカウントや、フェミニズムへの理解の手助けをしたいと考えている男性フェミアカウントのみに真面目な疑問を投げていれば、「女垢に絡みたいだけの痴漢」「フェミを論破したいだけのセクシスト」と誤解される可能性が減る 。
・あなたがセクシストじゃないなら、フェミニストを名乗るただの差別主義者を見たときに、「これだからフェミはw」と嘲笑うのではなく「あなたはただの差別主義者です」と自ら批判できる。あなたの観測範囲の全てのフェミニストがそれをフェミニズムから分断したかどうかをわざわざチェックしなくても、あなた自身が、アンチセクシストの立場から分断することができる。
・あなたがセクシストじゃないなら、ミソジニーミサンドリーを理解することで、フェミニズムミサンドリーを誤認せずに済む。
・あなたがセクシストではなく、あなたの性自認が女性または女体持ちである場合、自分が性差別を実感するまでフェミニズムに対する態度を保留にしておくことができる。「フェミニズムってよくわからない、本当に正しいのかな、果たして私にも必要なものなのだろうか」と懐疑的でも、「性差別には(もしそれが実在するなら)反対だ」という認識があればセクシストに与する必要がなくなり、女体や女性性を都合よく搾取したいセクシストから身を守る助けになる。
・あなたがセクシストじゃないなら、「パンプスを履くのが辛い」とこぼす女性に「革靴も辛いんだよ」「でも女性はネクタイしなくていいよね?」等の無益な絡みをする必要がなくなる。男性だけに事実上義務付けられた服装規定が辛いのならば声を上げよう。靴擦れしている女性に向かって、ではなくて、あなたの上司に、リクルートに、マイナビに、アオキに、コナカに、議員に働きかけよう。一人じゃ怖いよね、そしたら周りの男性にも呼び掛けてみよう。そしたらkutoo運動をしてた女性達は「こっちはパンプスを我慢してるんだからお前らも革靴くらい我慢しろよ」とは言ってこない、という事実に気づくことができる。
・あなたがセクシストじゃないなら、女性専用車両を女性優遇と感じた場合に、それを利用する女性に何かを求めるのは筋違いだと気づくことができる。女性専用車両に乗って性犯罪被害者を怖がらせるのではなく、男性を冤罪被害から守る男性専用車両導入の運動に署名しよう。自分が使ってる鉄道会社に働きかけよう。司法や警察の動きに注視し、何か問題があれば逐一抗議しよう。デモをするのも良いかもしれない。
・映画のレディースデーが、レストランのレディースランチが、女性専用プリクラコーナーが、男性差別だと感じるのであれば然るべき先に抗議しよう。あなたがセクシストじゃないなら、無関係の女性にそれらを訴えても何の問題解決にも繋がらないことに気づけるはずだ。そのサービスを考えた組織に、その場を提供してる責任者に、それが性差別だと訴えよう。
・あなたがセクシストじゃないなら、男性の育休制度が十分でないことや、父親の育児参加が難しい社会であることを、育児で疲弊してる母親に訴える必要がなくなる。本当に訴えるべき先はどこか、あなたの権利を奪っているのは誰か、見極めることができる。
・繰り返しになるが、あなたがセクシストじゃないことを自覚できれば、あなたが「本当に問題だと思っている事柄」にフォーカスできるようになる。ある事象を批判しているフェミニストに対し「こっちは批判しないの?」「あの件にはだんまり」「片手落ちなんだよなぁ」等の茶々を入れる必要がなくなる。あなたがセクシストじゃないなら、あなたが「こっち」を批判し、「あの件」について言及すれば済む話だと気づける。あなたの視座から批判すべきだと思ったことを批判しよう。

・もし、あなたがセクシストではなく、かつ「まともなフェミニストは日本に存在しない」と考えてるなら、あなたが「まともなフェミニスト」になることもできる。あなたは「まともなフェミニスト」が何なのか正しく理解しているのだから。
あなたの視座から「本当に困っている女性」や「本来真っ先に批判すべき事柄」や「優先的に解決すべき問題」が見えているなら、そちらに向かって活動しよう。数少ない「まともなフェミニスト」となり得るあなたの貴重な時間を、他のフェミニストの言動チェックに使うのは勿体無い。
・もし、あなたがセクシストではなく、かつ「日本社会に男性差別はあるけど女性差別は存在しない」と考えてるなら、男性差別の撤廃に尽力しよう。あなたが、あなたの視座から見える、あなた自身の直面している問題のみにフォーカスするのは何もおかしいことではない。社会から性差別を撤廃すること、本当の意味での平等を目指すことは決して楽な道のりではない。
ただし男性差別撤廃を目指す人達にとっては幸運なことに、私達が暮らす社会の決まりごとを作る人達、法律や規則を作る人達の殆どは男性だ。それが「性」差別であるという性質上、同性の方が訴えの共感を得やすいことはわかるだろう。あなたの住んでいる市区町村、都道府県の議会の男女の割合はどうだろうか。もしも市議会議員や県議会議員が女性ばかりで心細くなったら、あなたの仲間を見つけて、声を上げていこう。

あなたがセクシストじゃないなら。

フェミニストを批判したらセクシスト、とは言ってません。念の為。