少年誌の「お色気枠」と、壁尻の展示について

ジャンプフェスタ2019の、アニプレックスという企業のブースで、『ゆらぎ荘の幽奈さん』という漫画のヒロインのお尻が展示されるという出来事があった。
この展示では、「等身大のお尻」が壁から突き出ていて、そのパネルには「撮影可能です」「楽しみ方はあなた次第!!」「優しく触ってね!」という文言が掲げられている。
幽奈さんというのは幽霊であって、この展示は作中の「頭隠して尻隠さず」というシーンを再現していて、幽奈さんのおっちょこちょいな性格を表現しているシーンらしい。

私はこの展示に問題があると考えている。少なくともジャンプフェスタで行うべきでなかったという主張をしたい。

まず『ゆらぎ荘の幽奈さん』は、週間少年ジャンプで連載中の、幽霊×温泉ドタバタラブコメディーである。
前提としてヒロインの幽奈さんというのは、
・女子高生の地縛霊
・享年16歳
・「愛想がよく礼儀正しい性格で、初対面の相手ともすぐに打ち解けることができる」が、「 不可抗力でコガラシに裸身を見られたり触られるとパニックに陥る」というキャラクターである。

【問題点①】
彼女は高校生で、16歳であるということ。
幽奈さんは幽霊ではあるが、実体を持っていないどうこうというのは詭弁であって、16歳の少女というキャラクターであることに変わりはない。
彼女は未成年であり、子供である。ジャンプの対象読者年齢が10代だとして、彼女が主人公の恋愛対象として描かれることに問題は無いが、未成年キャラが「お色気シーン要員」として存在してることは問題ではないだろうか。また彼女の人格、すなわちキャラクターとしての個性を無視して頻繁に乳や尻が描かれているのは、作者やジャンプ編集者が、女性の内面を無視して女体を過剰に性的表象として扱っていることになる。そういった描写が青少年にどのような影響を与えるのかを大人が考えなくてはならないと思う。

【問題点②】
「尻のみ」という切り取り方。
これは作中の1シーンを再現してるのだが、それを立体にして展示する(それを鑑賞し触れて楽しむ)、というのはまた別の問題だ。
この展示の他に全身フィギュアも展示されていて、それもはっきり言って異常性は感じるのだが(無邪気な笑顔に、恐らくノーブラの胸がはだけていて、故意に扇情的に製作されている。繰り返すが彼女は16歳設定である。)、それにしても特定の部位だけを展示するというのは、女性の身体をふざけて扱いすぎだと思う。下着で隠れる部分というのは特にプライベートなゾーンであって、例えば小さい子には「下着で隠れる部分は他の人に触らせてはいけないし、他の人のプライベートゾーンも触ってはいけない」と教えるのが普通だ。手を繋いだり頭を撫でたりするのとはまた別の意味合いを持つからだ。ジャンプフェスタは子供をメイン層とした全年齢向けイベントなのだから、やはりこのような展示を置くべきでは無かっただろう。

【問題点③】
「撮影可能です」「楽しみ方はあなた次第!!」「優しく触ってね!」という文言。
この言葉は、誰から誰に向けての言葉なのか、ということだ。
前述の通り、幽奈さんは16歳である。そして「自ら不特定多数の人間にお尻を触らせる」ことを良しとするキャラクターではない。もちろん主人公のコガラシも、それを許容するキャラクターではない。即ち作中のシーンを表現していると言っても、それを展示すること自体がキャラ設定と矛盾しているのだ。
この文言を考えたのは、おそらく「アニプレックスの人間」であり、それは少なくとも「作者」「ジャンプ編集部の人間」「会場の責任者」が許可を出したことが想定される。推測に過ぎないが、おそらく全員が「成人」かつ「日本人」だったのではないだろうか?海外のオタクの反応を鑑みるに、こういった展示を全年齢向けに行うという発想は一部の日本人以外には受け入れられないと思う。
そして想定されている来場者は、ジャンプの読者、即ち少年だ。もちろん老若男女、少女や保護者も来場するのだが。
ということは、いい大人が、少年達に対して、16歳の少女の尻という表象を以てして、彼女のキャラクター(性格)を無視して「撮影可能です」「楽しみ方はあなた次第!!」「優しく触ってね!」と提示しているわけだ。
これはグロテスクと言うほか無い。

【問題点④】
それを公式がTwitterで宣伝してしまうこと。
この件は来場者のツイートから発覚したとかではなくて、アニプレックス公式が、鍵なし垢で、画像つきで、「等身大おしり」を「会場にお越しの方は是非」とツイートしたのだ。画像の中で、そのお尻を触っている手があからさまに女性の手(女性服の袖)であることが非常に姑息なのだが、いずれにしろ「お触り」出来ることを宣伝していた。ちょっとこれは不味いかもしれないからこっそりやろう、とかそんな意識は微塵も無くて、16歳の少女表象の実物大の尻を好き勝手に触れるよ~という展示で客引きする発想しかなかった訳である。

この件についてのまとめを少し読んだのだが、フェミだけが吹き上がってる!的な論調だったので驚いた。どこから話せばいいんだろって感じなんだけど、とりあえず18歳以下を性的表象として表現することはもう止めません?あと、ジャンプフェスタはエロ無しでも客呼べるでしょ?それから、女性の身体は…いや人の身体は、本人だけの物だから、本人の許可無く触っちゃいけないから、それをわかってない人が日本には沢山いるから、こういった展示を全年齢向けにおおっぴらにするのはやめようよ。
宜しく頼むよ。

お色気枠についてもまとめて書こうと思ったんだけど疲れたからまた今度にする。
一応個人的には、少年誌のお色気枠はあっていいと思う。ただ最近のラッキースケベはむしろ不健全かと。転んで女の子の服に顔突っ込んで胸揉んじゃう、みたいなやつ。とらぶるよりふたりエッチの方がまともだよね。性暴力でも小児性愛でもなくて、普通に男女交際からのセックスとかをもっと描けばいいのになって。それが対象読者年齢に対してまだ早いってんなら、普通にビキニ描く程度でいいでしょって。思います。