「お妊婦様」て。

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筆者の経歴を見ると、立派で勇気ある行動的な人のようだが、「お妊婦様」ってなんなんだ。なんて下品な言語感覚なんだろうか。
大体、皮肉抜きに妊婦は皆「お妊婦様」である。現在の危機的な少子高齢化の、子供を育てやすいとはとても言えない、格差は広がり給与は上がらないこの日本で、それでも子供を産もうとしているのだ。当然、本人達の身体も人生も全て本人のものだが、産むも産まぬも本人の自由だからこそ、行政は(国家や自治体を維持したいのであれば)その決断をサポートするべきなのである。彼女達によって種が存続するのだから、共同体が妊婦を支えるのは当たり前のことで、自分の命をかけて新しい命を産むのだから、全てにおいて自己都合・自分優先でいいはずだ。
社会が率先して「お妊婦様」扱いするべきなのに、実際にはベビーカーすら邪魔者扱いされてるのが日本の現状だろう。お大尽様よりもお妊婦様を優先せよ、と「お大尽様」が言うべきではないのか。
(これは子供を持たない/持てない人が軽んじられても良いという意味ではなくて、各人の人生で負荷がかかる時期を互いにサポートしようという話と、共同体の構成員を増やし得る/保護し得る行動は共同体でサポートしようという話である)

記事の本文中に<仕事や周囲への気遣いをせずに過剰な権利意識で職場に迷惑を掛けたり>とあるが、妊婦が自分の身体と子供のことだけに集中できるようにしてあげるのが成熟した社会だろう。プリミティブな社会でもそうだったかもしれないが。
職場で人員の増減や入れ替わりがあれば、なんとかするのは経営者やマネージャーの仕事であって、人の営み(女の、ではない)に妊娠出産育児はつきものなのだから、会社がそれを想定外の出来事と捉えることが間違っているのだ。

様々な社会問題に絡めて、ネットではよく<権利ばかりを主張>するというワードが散見されるが、「ばかり」ってなんだろうか?自分が生きていくため、生きやすくするために権利を主張することは何も悪いことではない。誰かの権利と誰かの権利がぶつかれば司法の出番となるだけだ。そして産休育休の制度を利用することは誰の権利も侵害していない。

そもそもなぜ「自分のタイミングで復職」したらいけないのか。
<仕事しながら子育てする女性は、みんな大変だ。中には大変でも、保育園が決まるとともにきちんと復帰する女性もいる。大変だからといって、すべての女性がこのようなことをするとどうなるか>とあるが、女性に限らず、全ての人が自分の人生のタイミングに合わせて働けたらそれが理想じゃないか。
「皆大変」でも、その大変さは一人一人異なる。筆者の経歴を見る限り、そんなことは十分ご承知のはずだ。
育児で言えば、子供が第一子である/兄弟がいるとか、夜泣きするかどうか、何らかの障害や病気を抱えているかどうか、頼れる親族知人がいるかどうか、自分の産後の体調がどのように回復するか/しないか、自分が10代か20代か30代か40代か、夫(夫の会社)が主体的である/協力的である/理解が無いかどうか、世帯年収がいくらか、自治体のサポートがどの程度か、会社への復職がどの程度困難/容易なのか、退職したら再就職はできるのかどうか、等々。
もちろん育児以外にも怪我や病気や介護など、全ての人にそれぞれ違った大変さがあるからこそ、各人のタイミングで働けることは誰にとっても助かることなのではないか。

というかね、保育園に<わざと落ちる>とあるけど、受験で白紙回答するのとはワケが違うわけですよ。ちゃんと申請してるんだから。そもそも認可に落ちなければこういう話にはならない。通える範囲の・通える料金の・通いたい保育園に入れることが確実でないんだから、誰も先のタイミングなんて読めない。

また「社会人としての常識が無い人」は、 その人が社会人としての常識が無い人である、というだけのことでしかない。不正需給だのモンスターだの悪意ある妊婦が増えているような印象操作は止めていただきたい。

ある人が自分の権利を主張したり、法的に認められている制度を活用することをハラスメントと呼ぶな。
ハラスメントはハラスメントをする人が悪いのであって、育休後に復職しない人は、育休後に働き続けたい人の敵ではない。